私は高校の修学旅行のスナップ撮影の為、中国の北京にいました。
妊娠中の家内が緊急入院との知らせがあり、日本に帰国し急いで病院に駆けつけると・・・
突然の長男誕生。早産でした。
家内は妊娠6 ヶ月、ほとんどお腹も出ていない状態でした。
産まれて2 日後の対面は衝撃的でした。
体重わずか522g。
透明の保育器に横たわる人間とは思えない我が子。
やせ細り、両目は未形成のまま、赤や青の配線を体中に付けられ生かされていました。
生後から6 ヶ月の間、面会時間は1 日2 時間。
医師からは「明日生きているか分からない」と言われ続けました。
触れることも許されず、私は透明のケース越しに必死で生きようとするこの小さな命を見つめ、
ただ写真を撮り続けました。
それまで撮影してきた写真は、お客様の特別な記念日にだけ残すものでした。 でも、「毎日生きていることが奇跡で、今のこの何気ない日常の瞬間こそ写真に残していくことを広めていきたい」 そう考えるようになったのです。
そして 2006 年に、ishida studio の頭文字ISと、私が発信したいこと、親から子供たちへ未来につながっていくmessage の頭文字Mをとって「ism」をオープンしました。
家族の日常を切り取るカジュアルフォトの専門店としてスタートし、当時写真業界では初の試みに賛否は有りましたが、強い信念をもって運営し全国からお客様が来ていただくまで成長しました。
ism オープンと同時期に、病気療養中の父が「今日は少し気分がいいから。」そう言ってふらっとスタジオにやってきました。ガン宣告を受け余命わずかと分かっていたので今しかないと思い、
せっかくなので笑顔の写真がいいと思い、必死に笑わそうと変なテンションになり母親が大爆笑した瞬間の一枚です。
なかなか笑わなかった父の表情が一瞬緩んだ瞬間で、私のお気に入りの写真になりました。
父はこの写真を最後に、2 年間寝たきりになり他界しました。
私たち写真館の仕事は、お宮参り、七五三、入園、入学、成人式、結婚式・・・など 0 歳~7 歳までのお子さまとその家族、結婚写真などの特別な記念日の撮影がほとんどです。 「大人の人が気軽にスタジオに行って写真を残す」という文化はありません。
2002年から現在まで、色々な経験をし、たくさんの方に助けていただきました。
私は 40 代になり、自分はなぜ写真に携わっているのか、自分の使命は何なのかを考えました。
私が父の写真を撮影し写真があることで幸せを感じているように、多くの方に写真を残していくことの必要性、写真から与えられるエネルギー、写真を撮られる楽しさなどを広めていくことが私の使命だと感じています。
10 年後、今より遥かに便利で情報がどんどん流れ通過していく中で、写真という一瞬で時を止め「確かなシアワセをかたちにする場所」を創りたい。 例えば、結婚記念日や退職の記念、誕生日や友達同士、うれしいことがあった日など・・・ 大人の人が写真を撮り人生の軌跡を残していくことでシアワセだと感じる人が増え、生きていることに感謝できる素晴らしい未来を想像しています。